読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

16-17プログラム:カレン・チェン

SP:Dave Grusin / On Golden Pond(映画『黄昏』より)

振付:ジョナサン・カサー、カレン・チェン

ヘルシンキワールドより。

アメリカ期待の17歳。とはいえ一番ジャンプの跳べる14、5歳ぐらいからバリバリ活躍して鳴り物入りでシニア入り、がトップシニアの通常ならカレンはそこまでの選手ではありませんでした。というか現在女子シングルのジュニアはロシアが席巻していてそれに唯一対抗できてるのが日本。アメリカは事実上トップ争いの蚊帳の外です。

ま、そうは言っても今季のシニアワールドの結果を見ればジュニアから順調にトップ継続できているのはロシア勢だけで、カナダの2人なんてジュニア時代は無名に近かった選手でした。

その中でもカレンはジュニア時代からいいルッツを跳ぶ選手として知られていました。ただ如何せん安定感に欠け、持てるポテンシャルを爆発させたいい演技を見せる時もあれば大自爆もあり、という感じ。今季の成績だけを見ても、GPSは6位7位、全米1位、四大陸12位、ワールド4位。波がある選手です。

そのポテンシャルを全て出して見せたのが今季の全米選手権。素晴らしい演技でした。動画は全米とほぼ互角の出来と言っていいワールドにしたのはこの動画主がTESをエレメンツ毎に書いてくれているからです。

使用曲はヘンリー・フォンダキャサリン・ヘップバーン主演作『黄昏』からテーマ曲のOn Golden Pond。大好きな映画です。未見の方は是非。

振付は五輪やチャンピオンシップには出場することができなかったレベルの選手だけど世界一美しいイーグルでスケオタには知られているジョナサン・カサー。村上大介選手の振付もしてました。

GPS一戦目の中国杯までは確かブルーの衣装でした。鳥に見立てた手袋も同じでしたがNHK杯からはより鳥っぽく、腕にヒラヒラをつけた白の衣装に変わりました。

ジャンプ構成は3Lz+3T/3Lo,2A。

高さ・飛距離ともとても大きな3Lzを跳べるんですが時に大きくなりすぎて失敗することもあります。全米とワールドではその加減がちょうどよく、上手くいきました。ただもっと加点を得るにはセカンドの着氷を今のくるんと着氷する感じではなく、スーッと流れて行くような感じになるといいと思います。今はやや回転不足ギリギリなので。

3Fでなく3Loなのはフリップにエッジエラーの心配があるからでしょう。いいルッツを跳ぶ選手にありがちです。

エレメンツ間の繋ぎらしい繋ぎがやっと見えるのが3Lo着氷後です。ということはジャンプをミスしにくい作りにしてあるということ。そして今や女子のSPでは他にやる選手がいなくなった長めのスパイラルを入れています。これで薄く感じられるエレメンツ間の繋ぎをなかったことにしています。繋ぎ繋ぎ繋ぎでガチャガチャしていない、音楽の流れを損なわない流れに合ったエレメンツを配置してあって、実に上手く作られたプログラムです。旧採点ぽい作りと言えるかもしれませんが、これはアメリカ人好みでしょうね。

ロシア語がわかりませんがおばちゃんはクワンぽいって言ってるのかな??

FS:Jacob Gade / Jealousy Tango by Katica Illenyi

          Jalousie by Albert Guinovart

振付:ジョナサン・カサー、カレン・チェン

全米選手権の演技。

デンマーク人ヴァイオリニストヤコブ・ゲーゼ作曲のタンゴ・ジェラシーを2つの音源で。

冒頭からのメインメロディがヴァイオリンなのが、ハンガリー人ヴァイオリニストカティカ・イレイニ、ジェール・フィルハーモニー管弦楽団演奏のJealousy Tango。アルバム「Live in Budapest 2011 Vol. 2」から。ステップシークエンスからのピアノメインの音源は、スペイン人ピアニスト・作曲家アルベルト・ギノヴァルトのJalousie。アルバム「Infamia, Tangos de Barcelona」から。そして3S+2T直後の繋ぎあたりから再びカティカ・イレイニ、ジェール・フィルハーモニー管弦楽団演奏のJealousy Tangoになります。中盤にピアノ版が入る感じの作りです。

ジェラシーはコンチネンタル・タンゴの代表曲であり、北欧タンゴの代表曲。フィンランドヘルシンキで行われるワールドに合わせた選曲だったのかもしれません。

3A以外では最も基礎点の高い3Lzを2回と3Sを2回の構成(本来2A+1Lo+2Sの3つめは3S)。

なぜSPでは3Loを選択しているのにFSでは3S2回なのか?多分3Loの後ろをコンボにするのが得意ではないか、パンクの可能性が他より高いからリスクを軽減するため?

最初のコンボと不安要素の3F以外は後半に入れているのでそれなりに攻めた構成と言えます。3Aがないなら3Lzと3Fを2回ずつの構成が女子では最強なんですが、これが現在できているのはマリア・ソツコワとマライア・ベルだけ。ルッツとフリップの跳びわけが女子には簡単なことじゃないのがこれだけでもわかります。

美しい身のこなし、スピンでの正確なポジション、スパイラルの美しさ、ドヤ感など典型的なアメリカのスケーター。大きな流れの中で演技が進んで行くのがアメリカ伝統のスタイルです。繋ぎの動きをこれでもかとエレメンツの前後にさえ詰め込んでくるロシアスタイルとは真逆で面白い。時代のトレンドというものはあるけれど、その中でも全員が似たようなスタイルにはならないのは国ごとに「フィギュアスケートとは」の考え方の違いがあること、あるいは選手ごとに出来ること得意なことが違うからで、新採点になってから皆似たような演技になると批判された時期もあったけれど結局は必ず個性というのは出てくるものだと思います。

思わず解説のタラとジョニーが同時に「ゴージャス!」と唸ってしまったディレイ回転の3Lz。カレンの最も得意なジャンプです。これで全米チャンピオンの座を手にしたと言っていい技。パンクすることもあるのが玉に瑕だけど3Lz2つ、安定すればアメリカ代表常連、世界でもメダル争いの常連になれるでしょう。

来季は何と言ってもオリンピックシーズン。すでにアメリカスケ連は全米選手権一発勝負ではない(シーズンの成績や実績を考慮する)と発表してるので今季全米女王になりワールド4位、3枠獲得に貢献したことは大きなアドバンテージです。ライバルは多いですがオリンピックで見られるのを楽しみにしています。